・・・……何不足のない身の上とて、諸芸に携わり、風雅を楽む、就中、好んで心学一派のごとき通俗なる仏教を講じて、遍く近国を教導する知識だそうである。が、内々で、浮島をかなで読むお爺さん――浮島爺さんという渾名のあることも、また主人が附加えた。「・・・ 泉鏡花 「半島一奇抄」
・・・これらへはまず翻訳書を教え、地理・歴史・窮理学・脩心学・経済学・法律学等を知らしむべし。 いわゆる洋学校は人を導くべき人才を育する場所なれば、もっぱら洋書を研究し、難字をも読み、難文をも翻訳して、後進の便利を達すべきなり。方今の有様・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・同じ書は『心学五倫書』という題名のもとに無署名で刊行されていた。初めは熊沢蕃山が書いたと噂されていたが、蕃山自身はそれを否定し、古くからあったと言っている。惺窩の著と言われ始めたのは、その後である。しかるに他方には『本佐録』あるいは『天下国・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫