しんとうめっきゃく【心頭滅却】
無念無想の境地に達すること。雑念を排して集中すれば、火の中でも涼しく感じるということ。困難な状況にあっても、超越した境地にあれば、苦しくないということ。
- 注記
- 「心頭」は、心・胸の内。「心頭しんとうを滅却めっきゃくすれば、火ひも自おのずから涼すずし」の略。
- 故事
- 武田勝頼たけだかつよりが、織田・徳川軍に敗れた時、武田側の恵林寺えりんじの住職であった快川かいせんが、燃え上がる山門の上に座し、この語句を唱えながら焼死したことは有名。
- 出典
- 杜荀鶴とじゅんかく「夏日かじつ悟空上人の院に題す」
- 用例
- 暁に及んでいよいよ寒く、心頭滅却の修行もいまはあきらめて、ああ早く青森に着いて、どこかの宿で炉辺に大あぐらをかき、熱燗のお酒を飲みたい、と頗る現実的な事を一心に念ずる下品な有様となつた。〈太宰治・津軽〉