
《上代は上二段活用。平安時代になって「偲 (しの) ぶ」と混同し、四段にも活用》
1 つらいことをがまんする。じっとこらえる。耐える。「恥を―・んで申し上げます」「不便を―・ぶ」
2 自分の存在や行いを、人に気付かれないようにする。外から見えないようにして身を置く。隠れる。「人目を―・んで通う」「―・ぶ恋」「世を―・ぶ」「物陰に―・ぶ」
1 (現代語に残存したものとして、ふつう「…にしのびず」「…にしのびない」など打消しの語を伴った形で用いる)救ってやりたい、捨てるに惜しい、といった気持ちを現したいのを押さえる。こらえる。「正視するに―・びず」「たっての願いを断るのは―・びないが」→しのびない
2 1に同じ。
「人目多み目こそ―・ぶれすくなくも心のうちにわが思はなくに」〈万・二九一一〉
3 2に同じ。
「惟光の朝臣、例の―・ぶる道はいつとなくいろひつかうまつる人なれば」〈源・松風〉
出典:青空文庫
・・・が、お蓮さんとは世を忍ぶ仮の名さ。ここは一番音羽屋で行きたいね。・・・ 芥川竜之介「奇怪な再会 」
・・・た時分、まるで人目を忍ぶ落人のように、こっそり暖簾から外へ出まし・・・ 芥川竜之介「妖婆 」
・・・、ストイックのように忍ぶから……心配せずに。俺たちのほうにはとも・・・ 有島武郎「ドモ又の死 」