・・・と急所をついている。 ジェスチュアでない世界平和と民主的社会の建設のために誠実な努力をつづけている世界のすべての人がMRAの本体を見きわめているこんにち、片山哲氏が大財閥の三井一門とコーでもてなされて「MRAの機動部隊を日本に派遣された・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・そのために、全篇を通じて章から章へと並列的にとび、読者の心に期待される急所をはずしたまま通りすぎているような印象を与えられるのである。 作者が二十章のところで、木村の一つの経験として僅か数行で説明しているA村の地主二人が二大政党に分・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・と、兄伴三のみならず今日の職業作家の共通な急所を突いてもいる。伴三が本郷の本屋で、高等学校の生徒が自分の本をしばらくひらいて立読みし、やがて卒然感興を失った表情でそれを乱暴に本棚へ戻すのを目撃していて受けた苦痛の感情は、「強者連盟」全篇の中・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・音楽にあわせ、ハアハア 急所の手ばたきと掛声ばかりは一人前だが、若い男が飛んで跳ねる活溌な足さばきが、その年の小母さんにできようはずはない。ハア どっこいしょ!ハア そら、あぶない! たか・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・インテリジェンスとは、こういう急所で、はっきり事態の意味を弁別する思考の能力をさしていうのである。 今日、日本の民主主義は、難航を示している。国内国外もつれ合う潮の流れの複雑さと、主体的に日本のインテリゲンツィアをこめる全人民に民主的感・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・リアリストの眼はその急所を掴む眼であり、その眼は社会の現象万端を動的な発展的なものとして観ることの出来る世界観によって培われるのではあるまいか。 私は、自分一人の問題に就いて与えられた質問から拡って、リアリズムの問題にまで触れているので・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・しかし、読者が作家に求めるのは、アサ自身は或は無意識であるかもしれないそういう人間成長の急所についての心にふれて来る物語ではないだろうか。利害相剋の緩和者として出現している梶井のありかたも、いいが、気になる何かが在るところも面白いと思う。ア・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
・・・と、現実観察の急所にふれているのである。 一八三〇年七月革命後、常に蝙蝠傘をもって漫画に描かれた優柔不断のルイ・フィリップがブルジョアジーの傀儡君主として王位についた時、一層凡庸化し、銭勘定に終始する俗人共の世界に反抗して、ユーゴー・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 小川は急所を突かれたとでも云うような様子で、今まで元気の好かったのに似ず、しょげ返って、饌の上の杯を手に取ったのさえ、てれ隠しではないかと思われた。「あら。それはもう冷えているわ。熱いのになさいよ。」上さんは横から小川の顔を覗くよ・・・ 森鴎外 「鼠坂」
・・・ ところでこのような意味の転換が行なわれるための最も重大な急所は、最初に「面」が「役割」の意味になったということである。面をただ顔面彫刻としてながめるだけならばこのような意味は生じない。面が生きた人を己れの肢体として獲得する力を持てばこ・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫