・・・手術後、ガーゼのつめかえの方法をいい加減にしたので、膿汁が切開したところから出きらず、内部へ内部へと病毒が侵入して、病勢は退院後悪化した。同志今野が、どうも頭は痛くなって来たし変だと思い、苦痛を訴えたら、済生会の軍医は、却ってこれまで一日お・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・益々労働条件は悪化し、戦争準備の金輸出再禁止で物価は三割がた上り、肥料の価さえ上った。賃銀は決してそれにつれて上らない。相場師と地主との庫で、米価はつり上げられるが、その米を辛苦して作った農村には何がのこされているか。朝鮮、台湾の殖民地で搾・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・健康悪化してこの伝記は未完のまま終っている。 八月十日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 八月十日午後五時半。夕立があがって心持よい夕方。蝉がオーシイツクツク、オシオスと鳴いています。御気分はいかがですか。私は毎日・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・インフレーションの悪化は防ぎようもなくて、先日のラジオで石橋蔵相が何といったでしょう。彼は聖書の文句を引用しました。「幼な児の如くならざれば天国に入るを得ず。」国民は幼な児のごとく政府を信頼して、三月危機を突破してくれといいました。 戦・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・ほとんど倍額に近いこの予算総額は、最近における日本のインフレーションのすくいがたい悪化を物語っており、同時に一般人民の極度な経済的困窮を示している。あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・一方、この四五年間における社会情勢の激動はこれまで純文学の読者であった中間層の急劇な経済事情の悪化をもたらした。経済事情の悪化は、原因として日常のこまかいものにまで及ぼしている増税、それに伴う物価の騰貴が直接のきっかけとなっており、増税のよ・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・におけるヒューマニズムの文学が提唱後四年経た今日に至っても未だ一種模糊退嬰の姿におかれているのは、社会情勢によるとは云え、その出発に於て、プロレタリア文学の蓄積と方向とを否定しつよくそれと対立しつつ、悪化する情勢には受動的で、社会矛盾の現実・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 青少年の悪化が問題になり、その角度から十代が注目され、文相天野貞祐は、日の丸をかかげること、君が代を唱うこと、修身を復活させようとしている。そして、日本の全人民が、いかなるものに対して犯罪をおかそうとしていると不安なのか、全住民の指紋・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・生活水準、労働条件は悪化するばかりだ。 世界にあふれる凡そ四千万人以上の餓えた失業プロレタリアートと、いつその失業群につきおとされるかわからない就業労働者とは互に手をつなぎ、このジリジリ迫って来る止めどのない餓死から身を守ろうと戦ってる・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・特別今年のメーデーは戦争のために起った物価騰貴、労働条件の悪化、いくら戦争をしても減らない三百万人の失業者の苦しみ、労働者農民を絞め殺す白テロに抗して、勇敢に闘われなければならぬ時です。たとえばこういうメーデーがわたしら働く婦人の生活にとっ・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
出典:青空文庫