・・・もしわたしが自己満足してこたつにあたって暮す気分ならば、この肉体的な悪条件に抗して毎日創作の仕事を続けるだけの努力はしません。自分に対してより多様な活動を求めているからこそ、現在は健康をリスクしながら長篇を完成しようとしているわけです。作家・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・日本の近代精神のより健やかなる展開のために先ず入用なのは、誤った技術家が非科学的に使う剪定鋏を引きこませること、及び悪条件にもちこたえつつ、どうやら命脈を保ちつづけて来た一条の民主的、合理的精神の幹に、全く科学的に考慮された接木をして、豊か・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
・・・田舎から出たばかりの清浄な肉体は、清潔であるが故に悪条件の中ではもろくて、これらの産業戦士たちが第一に犯かされるのが結核、次は脚気、つづいて視力障碍である。大抵の雇主は、健康保険三ヵ月の期間中はおいて、それが切れると、あらゆる病を故郷の土さ・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫