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・・・はなはだしきは、鉈でもって林檎を一刀両断、これを見よ、亀井などという仁は感涙にむせぶ。 どだい、教養というものを知らないのだ。象徴と、比喩と、ごちゃまぜにしているのである。比喩というものは、こうこうこうだから似ているじゃねえか、そっくり・・・
太宰治
「豊島與志雄著『高尾ざんげ』解説」
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・・・宮様と同じ隊であった息子が、前線で戦死したことを息子の余栄として、皇后の巻かれた繃帯で、わが良人、わが子のもがれた手足がくるまれ、目しいた眼が包まれることで、日本の女性の苦悩と疑惑とが感涙によって洗い流されなければならなかった。恩賜の義足、・・・
宮本百合子
「平和への荷役」