・・・ために半ばはこの自分を追跡する暗影を振り落とすためにアフリカに渡ってヘルワンの観測所の屋上で深夜にただ一人黄道光の観測をしていた際など、思いもかけぬ砂漠の暗やみから自分を狙撃せんとするもののあることを感知したそうである。この夜の顛末の物語は・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
・・・の創作態度において感知することのできた作者の「作家」というものについての理解が、作品中にはっきり姿をあらわしている点、特に多くの注意を喚起した。 農村のはてしない収奪と資本主義の高利貸搾取と二重の重圧によって祖先伝来の樹木さえ失い「樹の・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ それを今まで、今夜ほど明らかに感知しなかったと云ってよい。自分の生活では、無心、女らしい可愛い浅はかさ、などと云うものが、決してあるがままでは存在し得ない有様なのだ。 僅か一時間足らずの話の間に、其等、自分にとっては、意義ある多く・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・たとえば我々はある人の顔の筋肉が動くのを見て、その人の喜怒哀楽やまたそれ以上に複雑なさまざまの心持ち・思想などを感知する。我々の眼に映じたその微かな筋肉の動きと我々の感じたその内生とは、実際全く似よりのないものである。この二つは何ゆえに直接・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫