・・・ と子どもが言いました。「私もですよ」 と憂さ辛さに浮き世をはかなんださびしいおかあさんも言いました。 著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎 「真夏の夢」
・・・すべて、みな、この憂さに沈むことの害毒を人一倍知れる心弱くやさしき者の自衛手段と解して大過なかるべし。われ、事に於いて後悔せず、との菊池氏の金看板の楯の弱さにも、ふと気づいて、地上の王者へ、無言で一杯のミルクささげてやって呉れる決意ついたら・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・而も、自分にとって、創作は冗談や余技の憂さ晴しではない、たといどんなに小さくても、自分から産み出された芸術の裡に、又は、創造しようとする努力の裡に、自分の生命の意味を認めずにはいられない力を、内から感じているのである。 これはもう第一義・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・世に認められぬ人間は、自分の地位の卑しいことの憂さはらしに自分の見解の高さをほこるものである。×しかし自分が、高さによじのぼる機会に手をかけるや、この高き見解はぐらつきはじめる。成功の誘惑はよりつよい。そして、方法をえらばず、才のか・・・ 宮本百合子 「バルザック」
出典:青空文庫