・・・ ひとくちに、戦後の文学、戦後の作家とよばれている現代文学の素質に、このように日本独特な精神の国内亡命が、因子となって作用している事実は、見のがされてはならない点である。 第二次大戦、ファシズムの惨禍を、日本の戦時的日常の現実を、通・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 戦後の子供がラジオを通じレコードを通じ、なじんで歌う歌は、軽快に、明るくたのしく、リズミカルであるように、と児童の心理に即して選ばれている。君が代が歌そのものとして、歌う子供たちにわけのわからない義務感しか与えていないとすれば、君が代・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 昭和のはじめ第一次世界大戦後の各国の社会主義運動の擡頭につれ、日本にもプロレタリア文学運動がはじまった。その時代になってはじめて婦人の社会的地位の向上や婦人解放の課題は、その国の大衆生活全体の地位の向上と解放の実現とともに解決される問・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 文化の分野でも、戦後における再検討、より高い段階への発展のための研究がさかんに着手されている様子である。『雄鶏通信』十一月号やその他の雑誌にも、ごく断片的な報道がのせられた。除村吉太郎氏の翻訳で、私たちはレーニングラードの二雑誌『星』・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 産別会議情報宣伝部が編輯し、出版した『官憲の暴行』という戦後労働運動弾圧の記録がある。現場の労働者によってかかれたらしいこの記録が、もっと各現場組合の文学的能力を生かしていたら、どんなに浸透的で永続する読後感を一般の読者に印象づけるこ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 第二次大戦後の世界は、一層深い傷と破滅を経験して、中産階級の没落はもとより民族そのものの自立性さえもファシズムの暴力に対する抵抗の過程でおびやかされました。しかも日本・イタリー・ドイツのように三国連盟して、東洋と西洋の平和を攪乱したフ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ せっかく平和に戦後の生活を建設しようと努力している世界の人々を、強大な破壊力をもった新兵器をつくり出して、気にいらなければいつでもそれをぶっ放すぞという風におどかしている者があるとすれば、そのような狂気こそ世界の人類の理性の力で、・・・ 宮本百合子 「願いは一つにまとめて」
・・・戦争がほんとうにおそろしいのは、空から焼夷弾、爆弾の降って来る最中よりも、むしろ戦後破滅からの回復が困難であることである。日本のように、自分の国の天然資源が少い国土では、この点がよそより一層深刻である。 どこの国でも、ほんとに働いて・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・これら二つの条件をさけて、しかも戦後にひろがった雑多な読者層、文学作品とよみものとの区別を忘れ、或はそれをしらずに戦争の年々を育って来た読者層を満足させるために安全なプランといえば、「おかめ笹」「腕くらべ」などの作風によって親しみやすく思わ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・三 現戦争がこのように大きい変革を世界史の上にもたらすとすれば、戦後の芸術はどうなるであろうか。 第一に考えられるのは、一般民衆が勢力を得るとともに、在来の貴族的芸術を虐待するだろうという事である。露国の農民や労働者がレ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫