・・・吾々はよく、あの砂糖屋の奥にあった、茶室風の部屋に集って、其処で一緒に茶を呑みながら、雑誌を編輯したり、それから文学を談じたりして時の経つのを忘れる位であった。戸川秋骨君、馬場孤蝶君は、私が明治学院時代の友達という関係から、自然と文学界の仲・・・ 島崎藤村 「北村透谷の短き一生」
・・・一人は裁判所長の戸川という胡麻塩頭の男である。一人は富田という市病院長で、東京大学を卒業してから、この土地へ来て洋行の費用を貯えているのである。費用も大概出来たので、近いうちに北川という若い医学士に跡を譲って、出発すると云っている。富田院長・・・ 森鴎外 「独身」
・・・来会者は井上、元良、中島、狩野、姉崎、常盤、中島、戸川、茨木、八田、大島、宮森、得能、紀平の諸氏であったという。これらの中の一番若い人でも大学生から見ると先生だったのであるから、こういう出来事はすべて別世界のことであって、わたくしたちには知・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫