・・・をとり戻す。 そして、だんだん心は広々と豊かになって、彼のほんとの命が栄え出すのであった。 今も長閑な心持であたりの様子を眺めているうちに、禰宜様宮田の心は、次第に厚みのある快さで一杯になって来るのを感じた。 そして、平らかな閑・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 四五年前に病気が流行った時に数多の牛を失ったので、今は元に戻すにせわしくして居る。兄弟で一家に居て同じ仕事を共同にして居る。兄はどっちかと云えば小柄な、四角張った顔の中に小さい眼と低い鼻と両端の下った様な口をして居る。髪を少し長目に刈・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・をとり戻すために各方面に骨を折ってきた意義は実に大きい。けれども一九四九年には吉田内閣が議会で絶対多数の勢をかりて、旧い支配階級の勢力をもりかえし、人民がこの社会をもう少しは人間らしく、平和で安心して、住みよいところにしたいと思って試みるあ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫