・・・胞に対して実行すべきものに非ず、弓箭は遠く海のあなたに飛ばざるべからず、老生も更に心魂を練り直し、隣人を憎まず、さげすまず、白氏の所謂、残燈滅して又明らかの希望を以て武術の妙訣を感得仕るよう不断精進の所存に御座候えば、卿等わかき後輩も、老生・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・われ、かのレクチュアをなす所存なけれど、いまの若き世代、いまだにリアル、リアル、と穴てんてんの青き表現の羅紗かぶせたる机にしがみつき、すがりつき、にかわづけされて在る状態の、『不正。』に気づくべき筈なのに、帰りて、まず、唯物論的弁証法入門、・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・黄村先生は、そのような不粋な私をお茶に招待して、私のぶざまな一挙手一投足をここぞとばかり嘲笑し、かつは叱咤し、かつは教訓する所存なのかも知れない。油断がならぬ。私は先生のお手紙を拝誦して、すぐさま外出し、近所の或る優雅な友人の宅を訪れた。・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・ ぽつり、ぽつり、考え、考えしながら書いてゆく所存と見える。 い、夜の次には、朝が来る。 太宰治 「懶惰の歌留多」
・・・は只主命と申物が大切なるにて、主君あの城を落せと被仰候わば、鉄壁なりとも乗りとり可申、あの首とれと被仰候わば、鬼神なりとも討ち果し可申と同じく、珍らしき品を求めて参れと被仰候えば、此上なき名物を求めん所存なり」という封建武人のモラルに立って・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・にて、主君あの城を落せと仰せられ候わば、鉄壁なりとも乗り取り申すべく、あの首を取れと仰せられ候わば、鬼神なりとも討ち果たし申すべくと同じく、珍らしき品を求め参れと仰せられ候えば、この上なき名物を求めん所存なり、主命たる以上は、人倫の道に悖り・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・なるにて、主君あの城を落せと仰せられ候わば、鉄壁なりとも乗取り申すべく、あの首を取れと仰せられ候わば、鬼神なりとも討果たし申すべくと同じく、珍らしき品を求め参れと仰せられ候えば、この上なき名物を求めん所存なり、主命たる以上は、人倫の道に悖り・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
・・・しかし先へ刀を抜いた所存を、一応聞いて置きたい」と云った。 伊織は目に涙を浮べて暫く答えずにいたが、口を開いて一首の歌を誦した。「いまさらに何とか云はむ黒髪の みだれ心はもとすゑもなし」 ――――・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
出典:青空文庫