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・・・……あの戸口には、羽衣を奪われた素裸の天女が、手鍋を提げて、その男のために苦労しそうにさえ思われた。「これなる松にうつくしき衣掛れり、寄りて見れば色香妙にして……」 と謡っている。木納屋の傍は菜畑で、真中に朱を輝かした柿の樹・・・
泉鏡花
「小春の狐」
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・・・昔の人が手鍋さげてもといったその感情は、とぼしいなかにも二人が希望のある、そして見通しのある生き方をみとめあって、たすけあって不幸と闘ってゆくその幸福をいみした言葉ではないでしょうか。 若い婦人が戦争の間、あれほど幸福をうちやぶられてく・・・
宮本百合子
「生きるための恋愛」