・・・ 一度冠を曲げたら容易に直す人でないのを知ってるからその咄はそれ切り打切とした。が、万一自分が鴎外に先んじたらこの一場の約束の実現を遺言するはずだったが、鴎外が死んでしまったのでその希望も空しくなった。これは数年前、故和田雲邨翁が新収稀・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・長くなりますので、今日の手紙は、これだけで打ち切ります。 よい友人が得られそうなので、自分も久し振りに張り合いを感じています。やり切れなくなったら、旅行でもしてみたら、どうですか。不一。 二十五日井原退蔵 木戸一郎様・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・出さないように、つまりだれにも咎を負わさせないように、実際の事故の原因をおしかくしたり、あるいは見て見ぬふりをして、何かしらもっともらしい不可抗力によったかのように付会してしまって、そうしてその問題を打ち切りにしてしまうようなことが、つり橋・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・もう大概で打ち切りにしてもよさそうに思われるのに、そうしないのは、やはりジグスとマギーのような「定型」の永久性を要求する大衆の嘱望によるものであろう。しかし、たまには三原山記事を割愛したそのかわりに思い切って古事記か源氏物語か西鶴の一節でも・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・役人は、品物はないから、金で弁償する、その書類を出せというのであるが、その手続その他いろいろ厄介である上、まして、金で貰って何とするかというのが私の心であり、手続は打切り、私の心に深い憎悪がのこされてある。その時計のことなど跡白波となってし・・・ 宮本百合子 「時計」
出典:青空文庫