・・・今日は一見大差なく目前の困難に圧せられているごとくではあるが、それどころか、勤労階級の男女は一層ひどい封建性の下で家庭生活を営んでいるのであるが、新たな歴史の担い手である勤労階級の社会関係の必然から、見とおしとしては結局、プロレタリアートの・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・学生を未来の担い手として愛し感じている風潮であるか、それとも、学生は未成人であるという面を強調して観られてゆくかということでは、人生の光彩が大分違って来る。 たとえば、福沢諭吉の時代、学生というものはまぎれもなく未来の担い手としての理解・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・少年らのグループが作家の団体へ、あなた方の文学上の才能を、未来の担い手であるわれわれのためにもっと十分発揮してくれ、という公開状をよせたりして、この問題は活溌な注目の下にあった。この場合は、もちろん、昔の化物話や泥棒などではない、新しい社会・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・には、新たな歴史の担い手としての階級の意味、その文化建設についての当時の考え方と、知識階級の歴史的意味の問題等が、今日から顧みられれば、幾多の誤りをも含みつつ、筆者の人間及び知識人として当時に悩んだ良心の故に、率直に語り示されていることは、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ もし青年に新しい日本の担い手としての期待がかけられるのならば、それらのあらゆる現実を落着いて自分たちの経てゆく生活史のなかにうけとりつつ、歴史に消耗されず、そこからめいめいの建設を見出してゆかなければならない、そのような今日の時代の鍛・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・こうして日本の若い人々、明日の担い手である若い男女青年の生活を思いやっている時、私達は何か話の始まりにきっかけとなる、せめては一つの小説とか、一つの伝記とかを思い出したいと思う。ところが一寸その例が見当らない。日本の作品ばかりでなく、外国の・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 封建の伝統をもたない国の女性であるパール・バックが中国の婦人のおどろくべき強靭な生活力を、主として、妻、母という極めて重い軛の担い手としての姿の裡に発見し、描き出した。春桃は、深い伝統の波の底にあって、しかも習俗の形に支配されきっては・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ バルザックはプロレタリアートが次の社会の担い手であることを当時の現実から承認せざるを得なかったのであるが、彼はそれを、「循環する自然の現象」の一つと見て、その意味で避け難いものとした。社会関係で人間の悪徳、美徳は変ると一方に理解しつつ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ その時代に文学の道を歩き出した婦人作家がやがて旧い家族制度に反撥して当時の社会情勢では明らかに進歩性の担い手であったに違いない新進の作家と結婚した。今日の社会で貧しい妻になり母となって経験した現実は一層彼女を社会性に目醒めさせ、彼女を・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・彼らは勤労人民こそ新しい歴史の担い手であり、知識人としての自身のあらゆる豊富な才能やまじめな思想も、プロレタリアートが自分たちの運命の主人となった社会に於てこそ初めて花咲き輝くものであることを会得した人々である。そして、躊躇するところなくこ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫