・・・、箇性の再発見、インテリゲンツィア・小市民としての出生への再帰の欲望などが内的対立として分裂の形で作品にあらわれ、傷いた階級的良心の敏感さは、嘗てその良心の故に公式的であったものが今や自虐的な方向への拍車となりはじめた。 この現象と一方・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ここにも、ジイドが新社会の批評に当って心理的に拍車をかけられた内奥の秘密が横わっているのではなかろうか。 ジイドは、新しい社会が克服すべきものを指摘した過程において、一層あからさまに自己の克服すべきものを示した。彼の旅行記に対する『プラ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ どうせわたしたちは読むひまのない新聞といって、新聞の独占へ拍車をかけることは、この社会のすべての大資本、独占資本を援助することになる。新聞を読むひまのないほど、わたしたちの生活を追いつめている資本主義社会のひどい現象を助長することにな・・・ 宮本百合子 「主婦と新聞」
・・・真摯だという点で一定の読者への影響をもっているこの作家の考えることそれ自体に良心の意義を主張している創作態度は、客観的には知識階級が今日如何に生きるかを考えるという満足のために考えるポーズに拍車を加える結果ともなっているのである。 この・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・がら、自分たちの生きている歴史の意義や女の生活のおくれを自覚してゆく活溌能動の心情を失う方向へばかり導かれているとしたら、購買力として婦人の数の増大することはとりもなおさず、文学なら文学作品の商品化に拍車をかける作用をするばかりのようなこと・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
・・・ツルツルに剃って、粉をふった頤を、雪のように高いカラーの上にのせて、白い手袋をもって、輝く靴の後では拍車が歩くたんびに鳴っている。 二人の将校はわたしたちの後に立って、おしきせとの問答をきいていたが、なかの一人が、わたしに向って、カドリ・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫