・・・将校の動きも、隊長も指揮官も、相手方の部隊の様子も、軍隊の背後に於ける国内の大衆の生活状態も、そこに於ける階級の関係も、すべて戦争と密接な切り離せない関係を持っている。が、それと共に兵卒は、背後のいろ/\な関係を集団としての自分達のなかに反・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・人生観はすなわち実行的人生の目的と見えるもの、総指揮と見えるものに識到した観念でないか。いわゆる実行的人生の理想または帰結を標榜することでないか。もしそうであるなら、私にはまだ人生観を論ずる資格はない。なぜならば、私の実行的人生に対する現下・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・OSSIP SCHUBIN「アルフォンス・ド・ステルニイ氏は十一月にブルクセルに来て、自ら新曲悪魔の合奏を指揮すべし」と白耳義独立新聞の紙上に出でしとき、府民は目を側だてたり。「父」WILHELM SCHAEFER 私の外には此・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・演習の時と違うのだから、いざ空襲という時などには、その指揮の責任は重大だ。私は園子を背負って田舎に避難するような事になるかも知れない。すると主人は、あとひとり居残って、家を守るという事になるのだろうが、何も出来ない人なのだから心細い。ちっと・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・痩せた男が音楽家なら、ガンジー翁にオーケストラの指揮が出来るという理窟になる。」 傍の客たちも笑いました。 けれども、僕にはその夜、おかみから、まじめに一言ほめられた事が、奇妙に忘れられませんでした。これまでも、いろいろの女のひとか・・・ 太宰治 「女類」
・・・一人の下士が貨車の荷物の上に高く立って、しきりにその指揮をしていた。 日が暮れても戦争は止まぬ。鞍山站の馬鞍のような山が暗くなって、その向こうから砲声が断続する。 渠はここに来て軍医をもとめた。けれど軍医どころの騒ぎではなかった。一・・・ 田山花袋 「一兵卒」
・・・こういうことは作曲者かあるいは指揮者を同伴して演奏会へ行っても容易に得られない無言の解説である。カルメンの中の独唱でも、管弦楽の進行の波頭が指揮者のふりかざした両腕から落ちかかるように独奏者のクローズアップに推移して同時にその歌を呼出すとい・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・しかしそういう場合であっても、もしも入場していた市民がそのような危急の場合に対する充分な知識と訓練を持ち合わせていて、そうしてかねてから訓練を積んだ責任ある指揮者の指揮に従って合理的統整的行動を取ることができれば、たとえ二万人三万人の群集が・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・年かさらしいのが何か大将ぶって指揮している。こんなのもおおかた軍人党になるだろうと思って、過ぎたわが小半生の影が垣の外にちらつくように思う。突然向うの家の板塀へ何か打っつけた音がしたと思うと一斉に駆け出してそれきり何処かへ行ってしまった。凧・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・ トリオやカルテットぐらいならば別に指揮者を必要としないが、少し楽器が多くなって管弦楽の形をとるようになれば、もはやそれは一人のちゃんとした指揮者なしには進行することができなくなる。それと同様に連句でもおおぜいの共同に成る場合には、おそ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫