・・・その料理屋に於いて、この佳き日一日に挙行せられた結婚式は、三百組を越えたという。大隅君には、礼服が無かった。けれども、かれは豪放磊落を装い、かまわんかまわんと言って背広服で料理屋に乗込んだものの、玄関でも、また廊下でも、逢うひと逢うひと、こ・・・ 太宰治 「佳日」
・・・この事について幸田露伴博士の教えを請うたが、同博士がいろいろシナの書物を渉猟された結果によると釁るという文字は犠牲の血をもって祭典を挙行するという意味に使われた場合が多いようであるが、しかしとにかく、一書には鐘を鋳た後に羊の血をもってその裂・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・極度の場合においては、国庫の出納を毫も増減せずして、実際の事は挙行すべし。 その法、他なし、文部省、工部省の学校を分離して御有となすときは、本省においては、従来学校に給したる定額を省くべきは当然の算数にして、この定額金は必ず大蔵省に帰す・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・何とかいう十九歳の百万長者の息子とこれも同様な大金持の十六歳の娘とがニューヨークで盛大極る結婚式を挙行してセンセーションを捲き起したというのである。愛すこと、結婚生活を営みたく思う心、そして父母とならんとする希望は、然しながら、百万長者の子・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・大嘗会というのは、貞享四年に東山天皇の盛儀があってから、桂屋太郎兵衛の事を書いた高札の立った元文三年十一月二十三日の直前、同じ月の十九日に五十一年目に、桜町天皇が挙行したもうまで、中絶していたのである。・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫