・・・ 明治末期から大正にかけて、日本のブルジョア・インテリゲンツィアの文学の一つを代表した作家夏目漱石は、文学的生涯の終りに、自分のリアリズムにゆきづまって、東洋風な現実からの逃避の欲望と、近代的な現実探究の態度との間に宙ぶらりんとなって、苦・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・ また、その「形式探究の方法」に於て、何かの誤謬がなかったであろうか? プロレタリア作家が、本をつみ重ねた机の前にだけ坐りこんで、新らしい形式を見つけ出そうと頭を抱えているということは、果して真の新しい形式を発見する方法であろうか。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・の一生」に、少くとも進歩的な人間としての生き方の一つの具体的な道を示し得ていたことを思い合わせ、感想なきを得ないのである。 又、阿部知二氏は、「いかに生くべきか How to live」の探究において「冬の宿」を書いた。しかし、この作品・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 文学に於ける自我の探究が自我を自己目的とした時、現実関係の中に生きている人間像は作家の内的世界から失われる。そして、自意識は主我的にのみ発動することとなり、「自分を見る自分」と云う新しい存在が作品に登場し、横光利一はそれを第四人称と名・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・今日新しくプロレタリア文学の活動を開始した有能な人々が、どのくらい、文学の特殊的な技術の問題について、その微細な点にまで具体的探究をすすめようと努力しているかということがよくわかる。過去の日本の若いプロレタリア文学運動が顕著な弱点として持っ・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・作家としての自己の人間的探究とか、一定の環境において人間・作家として感じる責任という点は抹殺して、主人公の卑劣さ、劣等ささえ、外部の力のせいであるという他力本願の扱いかたです。これは、過去の文学において、個人の確立がされていなかったことのい・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・上演目録内容の広汎で直接な社会性から云っても、新様式の熱心な探究の点でも、注目すべきはこれらの劇団だ。 それにソヴェトには、夥しい数の移動劇団がある。モスクワにだけでも四十足らずある。大きい労働者クラブには所属劇団がある。小さいクラブ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・常に進歩に向って動いて来ているので、その間に生じる鋭く深刻な矛盾で、当面の生活にどんな障害や停滞や退歩がおこり、生活の低下が生じたとしても、私たちがそれをのりこえてゆく努力の方向は不変に進歩への方角の探究でなくてはならないはずである。どうせ・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
・・・しかし、文学の方でもそうなのですが、その熱心と探究とは、まだほんとうに新しい芸術の水脈にあたっていないような、つまり摸索の形で、追求が受けとられました。 ですから、技術的な細かいことのわからない私たちには、追求のさまざまな現われが、疑問・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ここでも寺田さんは人々があたり前として看過している現象の中に数々の不思議を見出し熱心にそれを探究している。 寺田さんの探究心にとってはそのいずれが特に重大だという訳ではなかった。つまり寺田さんは自然現象、文化現象のいっさいにわたる探究者・・・ 和辻哲郎 「寺田寅彦」
出典:青空文庫