・・・について、もう一つ忘れてならないことは、フィルムの記録が連続的でなくて断片の接合から成り立っていることである。毎秒にたとえば十六コマずつを撮影するとして、そのひとコマがまたシャッターの回転速度とそのセクトルの大きさによって規定されたある一定・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・ すべての破片がことごとく揃ってそれが完全に接合される日がいつかは有限な未来に来るであろうと信ずるか、あるいはそれには無限大の時間を要すると思うかは任意である。しかしどちらを信ずるかでその科学者の科学観はだいぶちがう。孔子と老子のちがい・・・ 寺田寅彦 「スパーク」
・・・よく調べてみると銅線の接合した所はハンダ付けもしないでテープも巻かずにちょっとねじり合わせてあるのだが、それが台所の戸棚の中などにあるからまっ黒くさびてしまっている。それをみがいて継ぎ直したらいくらかよくなったが、またすぐにいけなくなる。だ・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・しかもその一つ一つの象形文字のような夢内容は驚くべく多様な夢思想の圧縮されたエッセンスであり、またはなはだしく複雑な夢思想の網目の接合点である。それらの接合点のうちでも、その人のその日の、その前日の、また生涯の経験――意識的ないし無意識的―・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・科学の諸分野そのものの到達点、そのものの理解、利用面が十分柔軟寛闊に開拓されておらず、同時に所謂科学というものが、旧式の考えかたで、そこに作用する人間性を全く排除しているため、勢い科学と文学との手近な接合点が探偵小説というようなジャンルに求・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
出典:青空文庫