・・・それは推古から明治に至る各時代の民を主人公にし、大体三十余りの短篇を時代順に連ねた長篇だった。僕は火の粉の舞い上るのを見ながら、ふと宮城の前にある或銅像を思い出した。この銅像は甲冑を着、忠義の心そのもののように高だかと馬の上に跨っていた。し・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・従って、これらの稚拙な埴輪人形を作っていた民族が、わずかに一、二世紀の後に、彫刻として全く段違いの推古仏を作り得るに至ったことは、私にはさほど不思議とは思えないのである。 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
・・・もとよりその詳細な測定や記述の仕事は、今後に残されているでもあろうが、しかしわれわれのような素人が、推古仏の源流を求めていろいろと考えてみるというような場合には、これで十分である。寸法が精確に測定されていながら、写像がぼんやりしているよりも・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫