・・・赤いべべを着たお人形さんや、ロッペン島のあざらしのような顔をした土細工の犬やいろんなおもちゃもあったが、その中に、五、六本、ブリキの銀笛があったのは蓋し、原君の推奨によって買ったものらしい。景品の説明は、いいかげんにしてやめるが、もう一つ書・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・それが佐藤春夫先生の推奨にあずかり、その後、文学雑誌に次々と作品を発表することができました。 それで自分も文壇生活というか、小説を書いて或いは生活が出来るのではないかしらとかすかな希望をもつようになりました。それは大体年代からいうと昭和・・・ 太宰治 「わが半生を語る」
・・・松平春岳挙げて和歌の師とす、推奨最つとむ。しかれども赤貧洗うがごとく常に陋屋の中に住んで世と容れず。古書堆裏独破几に凭りて古を稽え道を楽む。詠歌のごときはもとよりその専攻せしところに非ざるべきも、胸中の不平は他に漏らすの方なく、凝りて三十一・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ 趙樹理の作品の紹介も、日本の文化・文学の現実ときりはなされて、民主主義文学の最もかがやかしい典型であるかのように一部から推奨されている。文学サークルの一部に共産主義の文学は寓話になってゆくものだ、という考えかたも導き出されている。・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・有益な本、考えさせる点の多い本と推奨された。あんな事実の切れ端を盛ったものでさえ、今の私たちが世界の実情を知りたいと思っている心の飢渇に対しては、何ものかであるかのように思えた、それほど私たちは何も知らない状態におかれているのだという今日の・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・を坪内逍遙博士に見ていただきました処、意外にも非常なお推奨を受けまして博士のお世話で中央公論に発表されたので、幸い有難い評判をいただきました。お茶の水の卒業後暫く目白の女子大学に学び、先年父の外遊に随って渡米、コロムビア大学に留まって社会学・・・ 宮本百合子 「処女作より結婚まで」
出典:青空文庫