・・・画の主題でも描法でも両方から互いに接近し模倣し入乱れて来ている。それだのにそうかと云って、洋画家で絵絹へ油絵具を塗る試みをあえてする人、日本画家でカンバスへ日本絵具を盛り上げる実験をする人がないのはむしろ不思議なくらいである。 洋画を通・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・近頃某氏のために揮毫した野菜類の画帖を見ると、それには従来の絵に見るような奔放なところは少しもなくて全部が大人しい謹厳な描き方で一貫している、そして線描の落着いたしかも敏感な鋭さと没骨描法の豊潤な情熱的な温かみとが巧みに織り成されて、ここに・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・の近代小説への道を示したことは周知である。文芸理論に於てはヨーロッパの評論、文学評価を学んで封建的善玉悪玉の観念を排し、社会と人間との現実を描くことを慫慂した逍遙が、「当世書生気質」の描法にはおのずから自身が明治社会成生の過程に生きた青年時・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・近づいて画面を見ると、どれも蒔絵のように塗られていて、私はこういうのをも尚描くということが出来るのであろうか、塗上げ術の問題はあるとしても描法の問題はここには消散してしまっている、そのように感じたのであった。 日本画家たちの日常生活をも・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
出典:青空文庫