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・・・ 雀が植え込みの椿の葉を揺るささやかな音。程なく私は縁側に出、両脚をぶら下げて腰をかけた。膝には赤い木皿に丸い小さいビスケットが三十入っている。 柱に頭をもたせかけ、私はくたびれてうっとりとし、ぼんやり幸福で、そのビスケットを一つ一・・・
宮本百合子
「雲母片」
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・・・又、雄々しい活力が、今私の心を揺る、サムソンのように、殿堂の柱に、今手をかけたサムソンのように神の命あれば山をも移す 信仰が野に来、自然に戻った私の胸に満つるのだ。草の戦ぎ! ひたと我下にある大地ああ、よ・・・
宮本百合子
「五月の空」