・・・軍部の煽動にのって若い女性が、明日にかくされている生活の破滅に向ってヒロイズムでごまかされないように、戦争的美名にかくされた資本主義の搾取の現実を見とおすように、荒くれたかぶった世間の気風のうちに、ひとすじの人間らしさと、その発展のための努・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・に満足しないで、労働階級は生産機関を握り、社会の運転を担当している階級なのだから、ブルジョア文学者のうかがい知ることの出来ない生産と労働と搾取との世界を解剖し、描写すべきであると主張された。 プロレタリア文学運動が、端緒的であった自身の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・同時に、一人の子供をピオニイルにしようとし、なし得たことによって得た経験が、亀のチャーリーの心持をプロレタリアとして、またアメリカ帝国主義の下で有色人種労働者として二重の搾取と抑圧とに闘っている日本人移民労働者としてのチャーリーの心持をどの・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 地方文化と都会文化との分裂、地方が文化上の搾取に会うことは、民主精神が伸長して、地方における人民自治の実質が高まったとき、根底から変化させられる。 社会政治の全面に、わたしたちの健全な判断力が反映してゆくにつれて、文化に対しても私・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・がモスコウの共産大学にいた間に何をしていたかと一言云ったらモスコーの学生生活の一番の特長は、それがいつでも大衆の活々した日常生活と結びついているところにあると云うはじまりで、細かくソヴェト同盟の失業と搾取のない労働者の生活、政治上の権利、ソ・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・と、『キング』の至るところにこの種類の金言がはめこまれている。「老いて楽をしようと思えば若いうち蟻のように働け」「圧しつけられてこそ味の出る沢庵」と、搾取と闘おうとするわれわれの当然の意気組みをそらすような一番始末にいけない「諦め」でフぬけ・・・ 宮本百合子 「『キング』で得をするのは誰か」
・・・帝政ロシアの支配者たちは搾取に反抗されるのがこわくて、勤労者には高い税で政府が儲けることのできる火酒と坊主をあてがってばかりいた。農村、都会とも、小学校はギリシア正教の僧侶に管理された。貧農、雇女の子供は中学にさえ入れなかった。猶太人を或る・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・――СССРの地図は、搾取すべき殖民地をこの地球のどの隅にも持っていないという点だけで一九一七年以来既に一つの輝きであった。今そこは、豊富な天然資源を百パーセント社会主義生産に活用して、世界唯一つの社会主義国家の威力を資本主義に対して確立し・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・それは明かなことだ。搾取に対して闘うプロレタリア・農民として男・女の全生活が、階級的芸術の表現をとおして、われらのプロレタリア文学の中に生かされ反映されるべきものだ。 これまで果してプロレタリア作家たちは、数少い婦人作家をもこめて、十分・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・それは時にあるいは有閑階級にのみ可能な非実践の実践として、すなわち搾取者の奢侈として特性づけられ得るであろう。あるいはまた怯懦な知識階級の特色としての現実逃避であるとも見られるであろう。しかしこれらの観照は「悠々たる」観の世界を持つものとは・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
出典:青空文庫