・・・そのとき新聞は、夫人が操縦していたということにいくらか刺戟的なものをふくんだ見出しをつけて書いた。あぶない真似をしないがいいのに、そういう感じがその記事を書いたひとの感情であったと思う。 ダットサンが、若い女のひとをつかってデモンストレ・・・ 宮本百合子 「この初冬」
・・・台湾旅客機エンボイ機が台北の北方七星山麓で遭難して八名の乗客操縦者全滅したのは三月十二日ごろのことであった。「日航」は当日の暴風と濃霧によって進路測定に誤差が生じたことを遭難の原因として詳細に地理的に報告した。そして「民間航空発展の貴い人柱・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 女性が飛行機を操縦する時代になっていることは今世紀の人類的な飛躍の姿であると思う。より一層の体力とより一層の科学性とが女性の生活に加って来つつあることが、女性による空間の立体的な克服としてあらわれて来ているのである。 非常に珍しく・・・ 宮本百合子 「空に咲く花」
・・・を一人の美人が「もうとるかあ」を操縦して馳けている。坐席がびっくりする程高いオープンで、ギヤー・ブレーキ・ハンドルすべてが露出である。エンジンだけが覆われている。ハンドルは坐席に合わせてまるで低いところについているから、美人は愛嬌よい顔をこ・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・尨大な繊維女工の群はブルジョア日本の特質をなすものでありますが、彼女等の生活は封建的隷属状態より少しも解放されて居らず、ブルジョアは彼女等に、漸く機械の操縦が出来る程度の教育しか許さないのです。 繊維女工以外の婦人に眼を転じても、事情は・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・著者も作家ではない操縦士である。彼の指導によって北極の歴史的飛行が完成されたのち、「如何にして空想が現実となったか」という題の記録を『新世界』にのせた。それを米川氏が着目して、ルポルタージュとして上々のものという評価から紹介されたものである・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
・・・ また別の話で、ラバァウルへ行く飛行中、操縦席からサンドウィッチを差し出してくれたときのこと、栖方は身を斜めに傾けて手を延ばしたその瞬間、敵弾が飛んで来た。そして、彼に的らず、後ろのものが胸を撃ち貫かれて即死した。 また別の第三の偶・・・ 横光利一 「微笑」
・・・他人の神経衰弱を癒すにはまず陰気な顔をした患者を自由に操縦せねばならぬ。 西行法師はこの点に一種の解決を与えた男である。一朝浮世のはかなさを悟っては直ちに現世の覊絆を絶ち物質界を超越して山を行き河を渉る。飄然として岫をいずる白雲のごとく・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫