・・・木枯しの擬音。 ほとんど、ひや酒は、陰惨きわまる犯罪とせられていたわけである。いわんや、焼酎など、怪談以外には出て来ない。 変れば変る世の中である。 私がはじめて、ひや酒を飲んだのは、いや、飲まされたのは、評論家古谷綱武君の宅に・・・ 太宰治 「酒の追憶」
・・・たとえば雑音を防止するために従来のステュジオが役に立たなくなるとか、実際の雑音はまるで別物に変わるから適当な擬音を捜すとか、動き回る役者の声をどうして録音するかというようないろいろの問題が、単なる技術上だけの問題でなくて、映すべき素材の上に・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・というから g+l や h+l のような組み合わせは全く擬音的かもしれない。マレイの glak も同様である。馬の笑うのは ilai でこれは日本に近い。「あざ笑ふ」の「あさ」は「あさみ笑ふ」の「あさ」かと思うがこれは (Skt.)√h・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・かりに偶然でないとしたところでそれはこれらの名が擬音的であるために生ずる自然の一致であるか、あるいは伝統因果的関係から来るのか、たぶん両方であるか、これはなかなか容易にはわかりにくい問題であろう。 笛の名でもニューギニアのムベイ。ニュー・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・もちろん楽器の原理は物理学的に普遍なものであるから、各国に同一な楽器のあるのは当然であり、また楽器の名称が往々擬音から生ずるとすれば、類似の名称のあるのは当然であると言って、簡単に片付けて投げ出してしまえばそれまでである。しかしそれで打ち切・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・そのために、ほんとうの音よりも適当な擬音のほうがかえってほんとうらしく聞こえるというおもしろい現象も起こるのである。それでこの録音ならびに発音器械の不完全を利用して、近いピストルを遠く聞かせたり、人声を井戸の底から響くように聞かせたりするこ・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・食糧を貯蔵しなかった怠け者の蟋蟀が木枯しの夜に死んで行くというのが大団円であったが、擬音の淋しい風音に交じって、かすかなバイオリンの哀音を聞かせるのが割に綺麗に聞きとれるので、これくらいならと思って安心したのであった。 色々な種類の放送・・・ 寺田寅彦 「ラジオ雑感」
・・・ もしまた、いろいろな自然の雑音を忠実に記録し放送することができる日が来れば、ほんとうに芸術的な音的モンタージュが編成されうるであろうが、現在のような不完全な機械で、擬音のほうがかえって実際に近く聞こえるような状態では到底理想的なものは・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・の来るような擬音的重畳形容詞の連続する例である。これは連続する場合もあり、四五句目に現われる場合もはなはだ多い。上の例では「ほろほろ」から四句目に「だんだんに」が来る。同じ百韻中で調べてみると前のほうにある「とろとろ」はだいぶ離れているが、・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫