・・・時節柄当局の神経は尖鋭となっていたので、ついにこの不穏の言動をもって、人心を攪乱するところの沙門を、流罪に処するということになった。 これは貞永式目に出家の死罪を禁じてあるので、表は流罪として、実は竜ノ口で斬ろうという計画であった。・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・それがためにかえって画面の明暗の調子を攪乱し減殺し、そうして過度の刺激によって目を疲らせるばかりであるから、現在のところでは芸術的には全く低級な単なるノヴェルティに過ぎないと言わなければならない。 視覚的映画に聴覚的な音響を付加すること・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない日がいつなんどき来るかもしれない。その日が来るとこれらの機械的鳥獣の自由な活動・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない日がいつ何時来るかもしれない。その日が来るとこれらの機械的鳥獣の自由な活動が始・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・らぬ愉快な鳥であると思うて居たが、ことしの春自分の病が段々に勢をまして、遂に精神の煩悶を来すようになって来て、今まで愉快であったカナリヤの声が遽にうるさくなって、それがために朝々寐起きの労れたる頭脳を攪乱せられるようになった。もし出来るなら・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・榊山氏の文章は虚無的な色調の上に攪乱された神経と、破れて鋭い良心の破片の閃きとで或る種の市街戦の行われている国際都市の或る立場の人々としての現実を反映している。けれども、これらの文章の大体は、私たちが夜中にも立ち出て見送った兵士たちの生活と・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・人民の生活をこういう状態におとしておく政府が、世界を攪乱する戦争挑発に協力していないという証拠を、わたしたちは、どこに見出すことができるでしょうか。 みなさま。 平和のために、というひとつのねがいは、太陽のように、世界の諸人民の間に・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・空にはキラキラ白く光る雲の片が漂って、風はガラス戸を鳴らしトタンを鳴らし、ましてや椿、青木などの闊葉を眩ゆく攪乱『中央公論』の「乳房」は伏字がなくてうれしゅうございます。出来、不出来は当人には今のところ不明です。一生懸命にとにかく体当り・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・地方にも都会にも様々の形で各機構に入りこんでいる右翼くずれ、特高の変形は、人民の統一行動を攪乱するのが唯一の任務であるから、一見勇敢な闘士めいて、どういう挑発をしないものでもない。もし人民が、現在日本政府は武力をもっていないという公の建前を・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・小さかったナチスがそういう支援・投資を得て怪物的な成長をとげ世界を攪乱しはじめて一九三八年以来、世界平和のため、自分たちの人民生活・国家の存在の擁護のために自分の息子たち孫たちを前線に送らなければならなくなったのは、ほかならぬかつてのナチス・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
出典:青空文庫