・・・ 明治七、八年頃、浅草の寺内が公園となって改修された。椿岳の住っていた伝法院の隣地は取上げられて代地を下附されたが、代地が気に入らなくて俺のいる所がなくなってしまったと苦情をいった。伝法院の唯我教信が調戯半分に「淡島椿岳だから寧そ淡島堂・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・荒川改修工事がこの爺さんには何となく不平らしい。 この日は少し曇っていて、それでいて道路の土が乾き切っているので街道は塵が多く、川越街道の眺めが一体に濁っていた。 巣鴨から上野へと本郷通りを通るときに、また新しい経験をした。毎週一、・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・しかし、はじめは人目に付きやすい処に立ててあるのが、道路改修、市区改正等の行われる度にあちらこちらと移されて、おしまいにはどこの山蔭の竹藪の中に埋もれないとも限らない。そういう時に若干の老人が昔の例を引いてやかましく云っても、例えば「市会議・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・わたくしは江戸時代から幾年となく、多くの人々の歩み馴れた田舎道の新しく改修せられる有様を見たくなかったのみならず、古い寺までが、事によると他処に移されはしまいかと思ったからである。それに加えて、わたくしは俄に腸を病み、疇昔のごとく散行の興を・・・ 永井荷風 「放水路」
出典:青空文庫