・・・その時分の生徒は皆恐らく今此所には一人もいないでしょう、卒業したでしょうけれども、しかし貴方がたはその後裔といいますか、跡続ぎ見たような子分見たような者で、その親分をこの教場で度々虐めていた事などがあるから、その子か孫に当るような人などは何・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・するとその男はモーニングでなくては教場へ出られないと云いますから、私はまだ事のきまらない先に、モーニングを誂らえてしまったのです。そのくせ学習院とはどこにある学校かよく知らなかったのだから、すこぶる変なものです。さていよいよモーニングが出来・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・何歳にいたれば必ず学につくべし、学につかざるをえずと強いてこれに迫るは、今日の日本においてはなはだ緊要なりと信ずれども、その学問の風をかくの如くして、その教授の書籍は何を用いて何を読むべからずなどと、教場の教授法にまで命令を下すが如きは、ま・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・まして日本の如き、その文明の実価はともかくも、西洋流の文明についてはすべて不案内なるこの人民に向い、高尚なる学校教場の知見を丸出しにして実地の用に適せしめんとするも、浮世のように行わるべからざるは明白なる時勢とも心付かずして、我が国人は教育・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・社会はあたかも智徳の大教場というも可なり。この教場の中にありて区々の学校を見れば、如何なる学制あるも、如何なる教則あるも、その教育は、ただわずかに人心の一部分を左右するに足るべしとのことは、必ずしも知識をまちて然る後に知るべき事柄に非ざるな・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
出典:青空文庫