・・・ それはとにかく、もし現代の活動映画が「影の散文か散文詩」であるとすれば、こういう影人形はたとえば「影の俳句」のようなものではあるまいか。 幻燈というものが始めて高知のある劇場で公開されたのはたぶん自分らの小学時代であったかと思う。・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・という散文詩があった。 問答「妻たち」が真面目な卓れた作品である。そういう話が同座の人々の中で一致した。あとで、或る人が「しかし、あの人の作品は、純粋であろうとして、現在出来上っている境地をこわすよりは、それを守ろう・・・ 宮本百合子 「折たく柴」
・・・というような小説そのものがいってみれば一つの散文詩だと、いえばいえるのでもあったろうか。 やはりその田舎の村へ雪のつもった冬に行ったことがあった。夜風が街道を吹きはらっていて、電柱のうなる音がしていた。ふと、その風が遠くの街道からカチュ・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・以後のロシアの解放運動の流れに対する関心からはすっかり離れ、懐疑的な「散文詩」「クララ・ミリッチ」などを書いた。 ツルゲーネフの遺骸がロシアにかえって来た時、官憲はその葬式を大衆的にやることを禁じた。ロシアの政府は、実践的には様々の問題・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫