・・・しかし、きょう勤労するすべての人に企業整備の大問題が迫っている。税の問題がある。 社会のこういう矛盾と撞着、それをみんなが知っているくせに、いちいちおどろいたり、苦しんだりしないような顔でいるくせになってしまった。しかも心は晴れていない・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・その時ピエールは永年の夢であった整備された研究室の実現も考え、また夫として父親としての家庭に対する愛情から、いくらかの特許独占の方法を思わないでもなかったらしかったが、結局は彼ら夫婦を結んでいるまじり気のない科学的精神に反するものとしてその・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・言論機関としてのジャーナリズムがつよい統制、整備のもとにおかれたのは一九四八年からだったが、その方法は、昔からみると比べものにならず技術的であった。ゴロツキ新聞の排除、用紙配給の是正、購読者の要求への即応という掘割をとおって、戦後の小新聞は・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・日常的にもっともっと利用するものとして考えられなければならないとともに、相当の専門的な研究にも実際役に立つだけに図書館の内容が整備されなければなるまい。 現在のところでは上野の帝国図書館にしろ蔵書の量と種目とでは決して満足と云えないし、・・・ 宮本百合子 「実際に役立つ国民の書棚として図書館の改良」
・・・十八年度最終の出版整備が公表されて程なくのことである。 今日の本やの気分というものを犇と感じつつ見ると「青眉抄」上村松園とある。「おや、珍しい本だこと」「さすがに装幀もようござんすね」そう云ったきり一冊しか出さないのである。・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・十二名の被告のうち、最年少者である清水豊、元整備係、同分会執行委員は、午前の人定尋問のとき、まず次のように発言した。「即刻この公訴をとり消して頂きたい。その点について申しあげたい。私は私を育ててくれた両親、かずかずの恩師、諸先生たちに正直で・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・軍需産業の病的な拡大のために企業整備がはじまり、民間の日常必需品の統制が開始された。前年十月に成立した東條英機内閣はこの時期、彼等にとってもっとも甘美なファシスト独裁の夢をみていた。一九四三年健康状態如何にかかわらず私の・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・企業整備という名でいわれたその淘汰は、喘ぎながらも便乗していた街の小工場、小ブローカーをつぶして、より大きい設備と資本に整備した。戦争が進むにつれ、規模が大きくなるにつれ、戦争で直接儲けている日本の資本形態は、より大資本の形にすすみ、そのこ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ ここに収められた諸論文は、即ち、日本プロレタリア文学運動が、当時の社会における客観的・主観的な事情によって理論的に最も高揚し、組織的にも整備せんとした第三期に属す時代において書かれたものであった。各論文は、当時の文学的動向に対して常に・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・女子の能力は男子の七十パーセント以上である、近代重工業にもふさわしい、と云われて、女子の技術補導所があちこちにつくられ、女子整備員のオバーオール姿が婦人雑誌に出された時代である。 これも一銭切手であることを、わたしは忘れられなく感じた。・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫