・・・ 新築の市役所の前に青年団と見える一隊が整列して、誰かが訓示でもしているらしかったが、やがて一同わあっと歓声を揚げてトラックに乗込み風のごとくどこかへ行ってしまった。 三島の青年団によって喚び起された自分の今日の地震気分は、この静岡・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
・・・キングは名代を遣わして参列させ、その他ケンブリッジ大学や王立協会の主要な人々も会葬し、荘園の労働者は寺の門前に整列した。墓はターリング・プレースの花園に隣った寺の墓地の静かな片隅にある。赤い砂岩の小さな墓標には "For now we se・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・力の強い子で、朝、教室の前で同級生たちを整列させているとき、級長の号令をきかないで乱暴する子があると、黙って首ッ玉と腕をつかんでひっぱってくる。そんなときもやはりわらっていた。 林が私のために、邸の奥さんに詫びてくれてから、私は林が好き・・・ 徳永直 「こんにゃく売り」
・・・敷石道の左右は驚くほど平かであって、珠の如く滑かな粒の揃った小石を敷き、正方形に玉垣を以て限られた隅々に銅の燈籠を数えきれぬほど整列さしてある。第二の門内に這入ると地盤が一段高くしてあって第一と同じ形式の唯だ少しく狭い平地は直様霊廟を戴く更・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・そこでみんなはきちんと運動場に整列しました。「気を付けっ」 みんな気を付けをしました。けれども誰の眼もみんな教室の中の変な子に向いていました。先生も何があるのかと思ったらしく、ちょっとうしろを振り向いて見ましたが、なあになんでもない・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・一同整列して居ります。」「よろしい。本艦は即刻帰隊する。おまえは先に帰ってよろしい。」「承知いたしました。」兵曹長は飛んで行きます。「さあ、泣くな。あした、も一度列の中で会えるだろう。 丈夫でいるんだぞ、おい、お前ももう点呼・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・登場する人物は少数のイタリー指揮官と、銃を与えられて、整列すること、敬礼すること、同じ黒い皮膚を持った沙丘の彼方の土民を射撃することを正当化されているリビヤ土人の一隊である。人間再出発の重大なモメントである土民との接触の面は、この映画で軍事・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・幾万をもって数えられるかと思う白い墓標は、その土の下に埋った若者たちがまだ兵卒の服を着て銃を肩に笑ったり、苦しんだりしていたとき、号令に従って整列したように、白い不動の低い林となって列から列へと並んでいる。襟に真鍮の番号をつけられていたその・・・ 宮本百合子 「女靴の跡」
・・・と書いたプラカードを立てて整列した。 現在、地球のいくところかで戦争行為が行われている。けれども、世界の声は、何を叫んでいるだろうか、平和である。 国連は、いろいろの矛盾に苦しみながら世界平和と戦争回避のために努力しようとしている。・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・昨年二月の二十六日に東京駅前の大通りをずっとつき当りの広場の方へ通った通行人は、あちらを背にして、駅に向った方に前面を向けて整列している一団の兵を、余程後になってから、「今からでもおそくない」と云った方ではなくて云われた方の側であったことを・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
出典:青空文庫