・・・ 伊井公侯を補佐して革命的に日本の文明を改造しようとしたは当時の内閣の智嚢といわれた文相森有礼であった。森は早くから外国に留学した薩人で、長の青木周蔵と列んで渾身に外国文化の浸潤った明治の初期の大ハイカラであった。殊に森は留学時代に日本・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・ 私はパパ、ママはいけないという松田文相の小学放送の試みや、ラジオにでるにはなかなかお金がかかるんでねえと打ちかこった或る長唄の師匠の言葉などを思い出しながら、その声をきいているのであった。 聴取料が五十銭になったことは、ラジオに対・・・ 宮本百合子 「或る心持よい夕方」
・・・満州問題がおこって以来、婦人雑誌を読む女のひとの間に和歌と習字との流行が擡頭している事実を考え、またそのことと、今度平生文相が行おうとしている学制改革案で男の学生には「労働証」女の学生には「家政証」を制定することとを思いあわせ、私は自分もひ・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・散々不評だった下條文相をやめさせるきっかけに、吉田首相は法隆寺失火責任を負わせ、火事は政治漫画をくりひろげた。政府や文部委員会が、こんどの議会で現実に解決する能力のないこんにちの教育問題から逃げる楯として、国宝再認識問題を過度に利用しないよ・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・バイブルに、男女は差別ある賃銀を、と書いてはなかろうが、カソリック教徒である日本の文相は、それらを教員たちとの係争点にしている。あらゆる市民が半封建的なものからの離脱を努力しているとき、文学もブルジョア民主主義的立場からの面をもたないわけに・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・青少年の育ってゆく精神によりどころを与えることが必要だということは誰のめにも明らかになっている。文相天野貞祐が、各戸に日の丸の旗をかかげさせ、「君が代は千代に八千代にさざれ石の、巖となりて苔のむすまで」と子供の科学では解釈のつかない歌を歌わ・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 青少年の悪化が問題になり、その角度から十代が注目され、文相天野貞祐は、日の丸をかかげること、君が代を唱うこと、修身を復活させようとしている。そして、日本の全人民が、いかなるものに対して犯罪をおかそうとしていると不安なのか、全住民の指紋・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・税に苦しめられ、物価高に苦しめられ、やっと子供を教育しようと思っている母親に、今日の新聞の文相高瀬荘太郎の話はなんとひびいたでしょう。文相は、父兄からのつけとどけのない大学教授たちの生活難について語り、私立学校の入学にからむ父兄からのつけと・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・ 橋田文相が、まず小学校教員の待遇改善の問題をとりあげているのも、このことを語っているのだろう。 けれども、本年に入って、青少年の犯罪の増したことは、世人に深い反省を求める現代の事実ではなかろうか。この半年に青少年の犯罪は一万を突破・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫