・・・ 菊池寛の感想を集めた「文芸春秋」の中に、「現代の作家は何人でも人道主義を持っている。同時に何人でもリアリストたらざる作家はない。」と云う意味を述べた一節がある。現代の作家は彼の云う通り大抵この傾向があるのに相違ない。しかし現代の作家の・・・ 芥川竜之介 「「菊池寛全集」の序」
・・・こう言うことを広告するのは「文芸春秋」の読者の頭脳を軽蔑することになるのかも知れません。しかし実際或批評家は佐佐木君を貶したものと思いこんでいたそうであります。且又この批評家の亜流も少くないように聞き及びました。その為に一言広告します。尤も・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ 雑誌社へきけば判るだろうと思い、文芸春秋社へ行き、オール読物の編輯をしているSという友人を訪ねると、Sはちょうど電話を掛けているところだった。「もしもし、こちらは文芸春秋のSですが、武田さん……そう、武麟さんの居所知りませんか。え・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・「文春は……?」「文芸春秋は貰ったからいい」「あ、そうそう、文春に書いたはりましたな。グラフの小説も読みましたぜ。新何とかいうのに書いたはりましたンは、あ、そうそう、船場の何とかいう題だしたな」 お内儀さんは小説好きで、昔私・・・ 織田作之助 「神経」
・・・という文芸春秋の小説は主人公の海千山千的な生き方が感じられてがっかりした。丹羽文雄氏にもいくらか海千山千があるが、しかし丹羽氏の方が純情なだけに感じがいい。僕は昔から太宰治と坂口安吾氏に期待しているが、太宰氏がそろそろ大人になりかけているの・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・二、三日中に、文芸春秋社から「新ハムレット」が出る筈です。それから、すぐまた砂子屋書房から「晩年」の新版が出るそうです。つづいて筑摩書房から「千代女」が、高梨書店から「信天翁」が出る筈です。「信天翁」には、主として随筆を収録しました。七月ま・・・ 太宰治 「私の著作集」
・・・僕の記憶する所では、新聞紙には、二六、国民、毎夕、中央、東京日日の諸紙毒筆を振うこと最甚しく、雑誌にはササメキと呼ぶもの、及び文芸春秋と称するもの抔があった。是等都下の新聞紙及び雑誌類の僕に対する攻撃の文によって、僕はいい年をしながらカッフ・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・『文芸春秋』が、一九三九年の春、もうそろそろ私も作品発表が可能らしいという見込みで、「その年」の原稿を印刷にする前に内務省の内閲に出した。やがて、内閲から戻されて来た原稿をもって『文芸春秋』の編輯者が目白に住んでいたわたしのところへ来た。そ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・火野葦平が、文芸春秋に書いたビルマの戦線記事の中には、アメリカの空軍を報道員らしく揶揄しながら、日本の陸軍が何十年か前の平面的戦術を継承して兵站線の尾を蜒々と地上にひっぱり、しかもそれに加えて傷病兵の一群をまもり、さらに惨苦の行動を行ってい・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・を設定して、新人の登場を励ました。文芸春秋社主催の芥川賞、直木賞。文学界賞、三田文学賞、池谷信三郎賞等。やはりこれも時代の特徴の一つとして数えられることは、これらの「賞」を与えられた石川達三、高見順、石川淳、太宰治、衣巻省三その他多くの作家・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫