・・・これに対しては出来るだけの応急救済法を講じなければならないことは勿論であるが、同時にまた将来いつかは必ず何度となく再起するにきまっているこの凶変に備えるような根本的研究とそれに対する施設を、この機会に着手することが更に一層必要であろうと思わ・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・ この颱風は日本で気象観測始まって以来、器械で数量的に観測されたものの中では最も顕著なものであったのみならず、それがたまたま日本の文化的施設の集中地域を通過して、云わば颱風としての最も能率の好い破壊作業を遂行した。それからもう一つには、・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・それを話しながらも、また話したあとでも、私の頭の奥のほうで、現代文明の生んだあらゆる施設の保存期限が経過した後に起こるべき種々な困難がぼんやり意識されていた。これは昔天が落ちて来はしないかと心配した杞の国の人の取り越し苦労とはちがって、あま・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・ 国家の安全を脅かす敵国に対する国防策は現に政府当局の間で熱心に研究されているであろうが、ほとんど同じように一国の運命に影響する可能性の豊富な大天災に対する国防策は政府のどこでだれが研究しいかなる施設を準備しているかはなはだ心もとないあ・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・そうしてこのような災害を避けるためのあらゆる方法施設は火事というものの科学的研究にその基礎をおかなければならないという根本の第一義を忘却しないようにすることがいちばん肝要であろうと思われるのである。・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・つまり、社会万端の施設も、民主の方法で利用されるものでなかったからでしょう。 せまい、個人的なまとまりよさだけを眼目とする躾は、社会全体の幸福を目ざす、大きい着眼点に移されなければなりません。 愛の躾は、社会に対する愛と識見の、・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
・・・共同炊事や托児所や診療施設など。若い農村の女性こそ青年たちと力を合わせ、新しい農村は生活を建設してゆく輝きでなければならないと思う。 宮本百合子 「新しき大地」
・・・更には、存在の無意義さによって解消しつつある厚生省が、社会施設として、それぞれの地区の住民に欠くべからざる托児所、子供の遊場をこしらえる力さえなかったことに向って、警告が与えらるべきであったと思う。日本婦人協力会というような、戦争協力者の集・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・戦時中の軍備施設を、二度とつかえないようにこわすだけに、そんな金がかかるのだろうか。ポツダム宣言を受諾して武装放棄をした日本は、どういう口実でも日本としてまた武装を行う理由はもっていないはずである。わたしたち日本の婦人の大部分は戦争を欲して・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 結局ここは工場で、母性保護施設ではないんですからな。」 憤慨してメーラーが叫んだ。「それが労働婦人が主人のソヴェトの工場ですか!」 インガがきっぱり云った。「私が機械のための場所は見つけます!」「すると……」 ニェ・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
出典:青空文庫