・・・この觀測につきては夙に西人が種々の科學的研究あり、又近く橋本〔増吉〕文學士の研究もあれど、卑見を以てするに、嵎夷、暘谷は東方日出の個所を指し、南交は南方、昧谷は西方日沒の處、朔方は北方を意味し、何れもある格段なる地理的地點を指したるものなり・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・日本は日出ずる国と言われ、また東亜とも言われているのだ。太陽は日本からだけ昇るものだとばかり僕は思っていたのだが、それじゃ駄目だ。日本が東亜でなかったというのは、不愉快な話だ。なんとかして、日本が東で、アメリカが西と言う方法は無いものか。」・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・その結果として日出後または日没前の一、二時間には太陽が特別に早く動くような気がする。 山の傾斜面でもその傾斜角を大きく見過ぎるのが通例である。 これらと少し種類はちがうが、紙上に水平に一直線を描いて、その真中から上に垂直に同長の直線・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・これには漫画家の近藤日出造氏もあきれています。そうとまでは知らず、こういうありがたい文相をこしらえるような投票をした幾人かのお母さんは、今日このごろの新学期をひかえて、人にいえない苦労をかさねているかも知れません。こういうひとつひとつのこと・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・ 木村は座布団の側にある日出新聞を取り上げて、空虚にしてある机の上に広げて、七面の処を開ける。文芸欄のある処である。 朝日の灰の翻れるのを、机の向うへ吹き落しながら読む。顔はやはり晴々としている。 唐紙のあっちからは、はたきと箒・・・ 森鴎外 「あそび」
出典:青空文庫