・・・一つきほどまえから、私のところへ、ちょいちょい日刊工業新聞という、私などとは、とても縁の遠い新聞が送られて来て、私は、ちょっとひらいてみるのであるが、一向に読むところが無い。なぜ私に送って下さるのか、その真意を解しかねた。下劣な私は、これを・・・ 太宰治 「酒ぎらい」
・・・ しかし一方でまた、たとえ日刊新聞や月刊大衆雑誌に掲載されたとしても、そういう弊に陥ることなくして、永久的な読み物としての価値を有するものもまた決して不可能ではないのである。たとえば前にあげたわが国の諸学者の随筆の中の多くのものがそれで・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・二 震源 従来でもちょっとした地震のある度にいわゆる震源争いの問題が日刊新聞紙上を賑わすを常とした。これは当の地震学者は勿論すべての物理的科学者の苦笑の種となったものである。 震源とは何を意味するか、また現在震源を推定す・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・という意味から出て、それから日刊の印刷物、ひいてはあらゆる定期的週期的刊行物を意味することになったのだそうである。そういう出版物を経営し、またその原稿を書いて衣食の料として生活している人がジャーナリストであり、そういう人の仕事がすなわちジャ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・しかし、ずっと前に同じような断片群にターナーの画帖から借用した Liber Studiorum という名前をつけたことがあったが、それを文壇の某大家が日刊新聞の文芸時評で紹介してくれたついでに「こんなラテン語の名前などつけるものの気が知れな・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・あるいは新聞の存在を余儀なくし、新聞の内容を供給している現代文化そのものがこれらの原因になっていると言ったほうが妥当かもしれないが、それはいずれにしても、私はあらゆる日刊新聞を全廃する事によって、この世の中がもう少し住みごこちのいいものにな・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・権力をにぎっており、議会において多数であるという力を横車に、自分のところでこれまで一枚も出していなかった政党新聞の用紙を日刊十万部分もわり取って、野党の機関紙をひどいのは十分の一ばかりに切り下げようとするやりかたは正当でない。検事総長が「友・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・ 新年から我等の日刊新聞を。それを持たないうち我らは共産党じゃない。 先ず犠牲を! ドイツ労働者は『赤旗』のために何をしたか。 コヴェント・ガーデンはロンドン野菜市場だ。花野菜、かぶ、きゅうりの山から発散する巨大な青くささに・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫