・・・ 母親は、三吉と小学校で同級だった町の青年たちの名をあげて、くりごとをはじめる。早婚な地方の世間ていもあるだろうが、何よりも早く倅の尻におもしをくっつけたい願望がろこつにでていた。「――牛は牛づれという。竹びしゃく作りには竹びしゃく・・・ 徳永直 「白い道」
・・・近頃早婚と多産とが奨励されはじめている。それはなんとなく賑やかで楽しげな声である。だが、それを実践したい心は溢れているとして、全体の人数の何割の若い職業婦人たちが、それぞれの勤め先で結婚と分娩とを公然の条件として認められているであろうか。共・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
この頃は、結婚の問題がめだっている。この一年ばかりのうちに、私たち女性の前には早婚奨励、子宝奨励、健全結婚への資金貸与というような現象がかさなりあってあらわれてきている。そして、どこか性急な調子をもったその現象は、傍にはっ・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・これは、今日の感情として、世界的なものであると思われる。早婚が奨励されていること、子供もたくさん生むようにとすすめられていること、結婚して暮すべき新天地というものが満州や支那へまでひろがって考えにのぼって来ること。そういう声々の発せられると・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・ この頃は早婚が奨励されていて、竹内茂代氏の説では女の適当な年齢は十九から二十歳と示されている。そして、よい母となるために女の生理の完全を要求せよ、と云われており、毎月おなかが痛むような娘はよろしくないとされている。こんな点からも、働く・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・今から見ればあまりな早婚だけれど、昔はそのようなことにはすこしも構わなかった。 それで若夫婦は仲よく暮していたところが、ふと聞けば新田義興が足利から呼ばれて鎌倉へ入るとの噂があるので血気盛りの三郎は家へ引き籠もって軍の話を素聞きにしてい・・・ 山田美妙 「武蔵野」
出典:青空文庫