・・・そして出てから、キュリーとのめぐり会い、その後の妻・母・科学者としての手いっぱいな彼女の生活の明け暮れ。そこを貫いて彼女に科学上の大きい業績をのこさせたもの、そこに私たちはこの世の中における並々ならぬものを見るのである。キュリー夫人の科学上・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・ 武士は明け暮れ血眼で居らねばならぬ諸公の身分をうらやみ、諸公は王をうらやんで、すべてのものに仰がるる王は又神をうらやみ、下っては只一振りの剣が命の武士をうらやむと申すのは神でのうてはわかり得ぬほどいつの世にも変らぬ不思議な事の一つでご・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・ 明け暮れのたつきは小役人として過しており、芸術に向う心では釣月軒として自分と周囲の生活とを眺めている宗房の目に映る寛永年代の江戸は、家光の治世で、貿易のことがはじまり、大名旗本の経済は一面の逸遊の風潮とともに益々逼迫しつつあった。米価・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・ 少女としてのフロレンスの明け暮れは、上流家庭の娘たちがみなそうであったように立派な家庭教師についてフランス語、ラテン語などの語学を勉強したり、音楽、舞踊、絵画、手芸などをはじめ、若い貴婦人として社交界に出たとき、狩猟の折にこまらないよ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
今年はどんな一年として私たちに経験されてゆくだろう。 世界の動き、日本の動きは微妙複雑な程度を増しこそすれ、決して単調平坦な明け暮れがあろうとは思われない。婦人の生活も、世界的な波動の中で更にそれぞれの国の特別な事情に・・・ 宮本百合子 「身についた可能の発見」
・・・農村の現実の中で明け暮れしている者の胸に、それらの農村写真の非真実性は自然映ってくるであろう。こんな綺麗ごとではないと思わずにいられまい。その感情で、都会の姿もここに見られるばかりではあるまいと鋭く思いいたる若い女は、数にしたらごく少数の怜・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫