・・・光を失ったヘラクレス星群も無辺の天をさまよう内に、都合の好い機会を得さえすれば、一団の星雲と変化するであろう。そうすれば又新しい星は続々と其処に生まれるのである。 宇宙の大に比べれば、太陽も一点の燐火に過ぎない。況や我我の地球をやである・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・「あのいちばん下の脚もとに小さな環が見えるでしょう、環状星雲ですよ。あの光の環ね、あれを受け取ってください。僕のまごころです」「ええ。ありがとう、いただきますわ」「ワッハッハ。大笑いだ。うまくやってやがるぜ」 突然向こうのま・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・それから環状星雲というのもあります。魚の口の形ですから魚口星雲とも云いますね。そんなのが今の空にも沢山あるんです。」「まあ、あたしいつか見たいわ。魚の口の形の星だなんてまあどんなに立派でしょう。」「それは立派ですよ。僕水沢の天文台で・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・それから博士は俄かに手を大きくひろげて「げにも、かの天にありて濛々たる星雲、地にありてはあいまいたるばけ物律、これはこれ宇宙を支配す。」と云いながらテーブルの上に飛びあがって腕を組み堅く口を結んできっとあたりを見まわしました。 学生・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫