[補説]文化庁が発表した平成20年度「国語に関する世論調査」では、「事件の後には、時を分かたず、厳重な警備が行われた」という例文を掲げ、「時を分かたず」について、「(ア)すぐに」「(イ)いつも」「(ア)と(イ)の両方」「(ア)(イ)とは全く別の意味」「分からないの」中から、その意味を選ばせている。解答率は(ア)66.8パーセント、(イ)14.1パーセント。国語課は(イ)を本来の意味とするが、この意味で使われている例はほとんどないのが実状で、例文の場合は(ア)(イ)どちらにも解釈可能である。
国語課が調査対象とした「時を分かたず」は多くの国語辞典には採録されていない。また、新聞紙上等にも使用例を見出すのが難しい。そこで本書では古語「時分かず」を見出し語として立て、語釈も古語用例に従った。なお、国語課担当官によると、「昼夜を分かたず」の「分かたず」に注目し、これに「時を」を付けた「時を分かたず」を調査対象とし、本来の意味を「いつも」とした由である。