・・・ それより以前にも、垂仁紀を見ると、八十七年、丹波の国の甕襲と云う人の犬が、貉を噛み食したら、腹の中に八尺瓊曲玉があったと書いてある。この曲玉は馬琴が、八犬伝の中で、八百比丘尼妙椿を出すのに借用した。が、垂仁朝の貉は、ただ肚裡に明珠を蔵・・・ 芥川竜之介 「貉」
・・・色とりどりな曲玉形のお菓子は、めいめいの前にあったさらの中でかがやいて見えました。「僕のは、これんばかし。」と、太郎さんがいいました。「姉ちゃんが、いちばんたくさんだ。」と、二郎さんがいいました。「いいえ、みんなおんなじですよ。・・・ 小川未明 「お母さんはえらいな」
・・・それはそうと、なにかこのあたりで、おもしろい土器の破片か、勾玉のようなものを拾った話をききませんか。」と、紳士はたずねました。「僕、勾玉を拾いました。それからかけたさかずきのようなものも拾って持っています。」「勾玉? さかずきのかけ・・・ 小川未明 「銀河の下の町」
・・・甲冑のほかには首飾りの曲玉や、頭の飾りなどのような装飾品も、「意味ある形」として重んぜられていたらしい。しかし何と言っても「意味ある形」のなかには、「顔面」の担っている意味よりも重い意味を担っているものはない。その点から考えると、埴輪人形の・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫