・・・がて去にたる魚屋かな褌に団扇さしたる亭主かな青梅に眉あつめたる美人かな旅芝居穂麦がもとの鏡立て身に入むや亡妻の櫛を閨に蹈む門前の老婆子薪貪る野分かな栗そなふ恵心の作の弥陀仏書記典主故園に遊ぶ冬至かな沙弥律師こ・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・「何か学問をして書記になりたいもんだな。もう投げるようなたぐるようなことは考えただけでも命が縮まる。よしきっと書記になるぞ。」 ペンネンネンネンネン・ネネムはお銭を払って店を出る時ちらっと向うの姿見にうつった自分の姿を見ました。・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
一、ペンネンノルデが七つの歳に太陽にたくさんの黒い棘ができた。赤、黒い棘、父赤い眼、ばくち。二、ノルデはそれからまた十二年、森のなかで昆布とりをした。三、ノルデは書記になろうと思ってモネラの町へ出かけて行った。氷羊歯・・・ 宮沢賢治 「ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ」
・・・けれども役所のなかとちがって競馬場には物知りの年とった書記も居なければ、そんなことを書いた辞書もそこらにありませんでしたから、わたくしは何ということなしに輪道を半分通って、それからこの前山羊が村の人に連れられて来た路をそのまま野原の方へある・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・捜査のすすむにつれて三鷹の組合の副委員長をしている石井万治という人は嫌疑をかけられている書記長の自宅を訪問し、他所へつれて行って饗応し、ノートをひらいて、緊急秘密指令三百十一号、三百十八号というものをみせ、あなたのことについては骨を折るとい・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・のために」が書かれている。「ナップ」常任中央委員会から左翼的逸脱の危険を、警告されたのであった。このときは、山田清三郎が、右翼的日和見主義の自己批判を発表した。当時「ナップ」の書記長は山田清三郎であった。「前進のために」をよむと、誤りをみと・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・その記事の傍らに見るものは、連日連夜にわたる幣原、三土、楢橋の政権居据りのための右往左往と、それに対する現内閣退陣要求の輿論の刻々の高まり、さらにその国民の輿論に対して、楢橋書記翰長は「院外運動などで総辞職しない」「再解散させても思う通りに・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・或る時はイギリスの鉄道局書記になろうとした。これはカールの字体が分りにくいために採用されなかった。 一八五九年。アメリカを中心としてヨーロッパ中を襲った大恐慌は、マルクス一家の窮乏をますますひどくした。けれどもカールは「万難を排して目的・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・彼はもう専門的な作家で、昔の農村委員会時代の書記ではない。従って彼がその周囲にもっている集団は昔日の大衆ではなく、主としてかぎられた文学的集団になって来ている。 文学の主題としての、国内戦は、記録文学の時代をすぎて既に革命の歴史的観点か・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・稀に願届なぞがいれば、書記に頼む。それは陸軍に出てから病気引籠をしたことがないという位だから、めったにいらない。 人から来た手紙で、返事をしなくてはならないのは、図嚢の中に入れているのだから、それを出して片端から返事を書くのである。東京・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫