・・・生活の合理化ということも、その根本は、漁村生産方法の合理化と、最低限の生活の確保ということに、漁村の女の関心が向けられなければならないのではなかろうか。漁村の女のひとは、農村の女より時間的なひまは一日のうちに沢山もっているかもしれない。けれ・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・だから、幸福とはどういうものかという問いに答える人々の言葉は実に区々で、ある人は幸福とは各人の主観でだけ感じられる一つの心境であるというし、他のある人は、最低限の衣食が足っていれば幸福であるとし、第三のひとは、健康こそ幸福であるというであろ・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ 常識というものは、いつでもそれぞれの社会の歴史が可能としている進歩の最低限を示すとともに、それぞれの社会のもっている保守の最頂点を示しているものである。そういう常識の本質をつかんで、人間の幸福に向って、絶えず常識の能動な面を刺戟してゆ・・・ 宮本百合子 「歳月」
・・・ このような文学に於ける社会的見地の抹殺と客観的な評価の消滅が充ちていたとき、最低限の形ででも民衆の日常の現実を文学の対象として描こうとした努力から中野重治「汽車の罐焚き」や徳永直の「八年制」などが書かれた。 この年七月蘆溝橋に轟い・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・そうであるならば最低限の生活の安定がその勤労によって保たれ、勤労人民としての社会保護が確保されなければならない。そのような全人民の社会的な生きかたの要求、その実現の努力とともに、民主文学の可能性も拡大されるのである。労働時間と賃金の問題は、・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・あらゆる面で、一般の生活の最低限の安定を保とうとする努力が、新しい政府へ向けられている一つの要望と共力との焦点であろうと思われる。 橋田文相が、まず小学校教員の待遇改善の問題をとりあげているのも、このことを語っているのだろう。 けれ・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫