・・・小作としてどうしてもそこで働かせておかなければこまる農民の住居は最小限において。家の小さいことは地積の関係ばかりでなく、代々この地方の農民が、決して、祖先からの骨をこの土地に埋めて来た稲田から、地主のように儲けたことは唯一度もなかったことを・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・ 農家を維持するに必要な最小限の耕地面積は略一町七反であると云われている。 ところが実際では日本の全耕地所有農家の約半数が五反未満の田畑をもっているに過ない。 玄米一石の生産費自作農二五円八七銭 小作農二八円七一銭・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・それは科学者としての最小限の義務ではなかろうか。 科学と探偵小説 木々高太郎氏は、執筆する探偵小説によって賞をも得たことは周知であり、パヴロフの条件反射を専攻されている医博であることを知らぬものはない。同氏の『・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・その文学の中で、自然の美は当然最小限にしか、その断片しかありようがない。自然が、歪んだ社会条件でどんなにひどくきりこまざかれているかという、その姿がある。 では、とかく牧歌的な空想をもって文学に扱われて来た田舎ではどうであろうか。これに・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・ 常識というものは、その時の社会の歴史が可能にしている進歩の最小限を表し、同時にその社会の持っている偏見や保守などに最大限であるものだから。〔一九四八年三月〕 宮本百合子 「“慰みの文学”」
出典:青空文庫