私は、蔵書というものを持ちませんが、新聞や、雑誌の広告に注意して、最新の出版でこれは読んで見たいなと思うものがあると求めるのがありますが、旧いものは、これは何々文庫というような廉価本で用を達しています。読んでしまえば、それでいゝような・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・そこには最新の出来事を知っていて、それを伝播させる新聞記者が大勢来るから、噂評判の源にいるようなものである。その噂評判を知ることも、先ず益があって損のない事である。 この店に這入って据わると、誰でも自分の前に、新聞を山のように積み上げら・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ ベデカというものがなかった時の不自由は想像のほかであろうが、しかしまれには最新刊のベデカにだまされる事もまるでないではない。ある都の大学を尋ねて行ったらそこが何かの役所になっていたり、名高い料理屋を捜しあてると貸し家札が張ってあったり・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・古い研究などはどうでもよい。最新の知識すなわち真である。これに達した径路は問う所ではないのである。実際科学上の知識を絶対的または究極的なものと信じる立場から見ればこれも当然な事であろう。また応用という点から考えてもそれで十分らしく思われるの・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・ このように、二千年前の骨董の塵の中にも現代最新の発明の種があるとすれば、同じ塵の中には未来の新発明の品玉がまだまだいくらも蔵されているかもしれない。「アー、そんなものは君、もう二十年も前にドイツの何某が試みて失敗したものだよ」とい・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・自然界は古いも新しいもなく、つまらぬものもつまるものもないのであって、それを研究する人の考えと方法が新しいか古いか等が問題になるのである。最新型の器械を使って、最近流行の問題を、流行の方法で研究するのがはたして新しいのか、古い問題を古い器械・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・ エジソンの発明から十数年の後に、初めて東洋の田舎の小都会に最新の驚異として迎えられた蓄音機も、いつとはなしに田舎でもあまり珍しいものではなくなってしまった。日曜ごとにK市の本町通りで開かれる市にいつもきまって出現した、おもちゃや駄菓子・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・ 七 最新の巨大な汽船の客室にはその設備に装飾にあらゆる善美を尽くしたものがあるらしい。外国の絵入り雑誌などによくそれの三色写真などがある。そういう写真をよくよく見ていると、美しいには実に美しいが、何かしら一つ肝・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・ これも別の事であるが流行あるいは最新流行という衣装や粧飾品はむしろきわめて少数の人しか着けていない事を意味する。これも考えてみると妙な事である。新しい思想や学説でも、それが多少広く世間に行き渡るころにはもう「流行」はしない事になる。・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・それは最新化学兵器についてのニュースだった。おそろしい化学力をもつその兵器の効果は、すべての人類をたちまち醜い不具にして、死滅させる威力をそなえているものであると説明されている。それを公表しているのはイギリスの学者であった。 わたしはそ・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
出典:青空文庫