・・・現在でも月刊雑誌の編集部では随筆の類は「中間物」と称する部類に編入され、カフェーの内幕話や、心中実話の類と肩をならべ、そうしていわゆる「創作」と称する小説戯曲とは全然別の繩張り中に収容されているようである。これはもちろん、形式上の分類法から・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ この必要に応ずる最も手近なものは、週刊、旬刊ないしは月刊の刊行物である。名前はやはり新聞でもそれはさしつかえないが、ともかくも現在の日刊新聞の短所と悪弊をなるべく除去して、しかもここに仮定した必要の知識を必要な程度まで供給する刊行物で・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ かつてわたくしが籾山庭後君と共に月刊雑誌『文明』なるものを編輯していた時、A氏は深川夜烏という別号を署して、大久保長屋の事をかいた文を寄せられた。今その一節を見るに、湯灌場大久保の屋敷跡。何故湯灌場大久保と言うのか。それは長慶・・・ 永井荷風 「深川の散歩」
・・・十何年来買ったことのなかった色々の月刊雑誌も寄贈をやめましたから、このことも様子が違います。さて買うとなると、この頃の内容広告は一円が惜しいようなものでね。しかし悪い米も食べてみなければ、悪さも良さもわからないというところもあります。 ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 柳宗悦さんたちのやって居られる『月刊民芸』という雑誌の座談会で、誰かが、この頃やっといくらか人々が物の美しさに目をとめて来たようだ、と云っておられる今日の傾向は、そういう訳で、決して単純な動機であると云えない。単純に、美しさを生活の中・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・『月刊ロシア』という雑誌は、どういう理由でか戦時中にも刊行をつづけていた。「虹」は、そこに連載されたポーランド婦人作家ワシリェフスカヤの作品で、独軍制下にあるウクライナ農民の一つの村に起った物語である。麦の宝庫であるウクライナは、一九一・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫