・・・ 東京堂月報に拠ると昭和八年上半期の新刊書数は、実に二千四百余種に達しています。これに後半期を入れて一ヶ年にしたら、夥しき数に上るでありましょう。この点近代人が、木版、手摺の昔の出版界時代を幼穉に感ずるのも無理がありません。 し・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・今月、「文学月報」に発表された短篇小説を拝見して、もう、どうしてもじっとして居られず、二十年間の、謂わば、まあ、秘めた思いを、骨折って、どもりどもり書き綴りました。失礼ではあっても、どうか、怒らないで下さい。私も既に四十ちかく、髪の毛も薄く・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・ デビスというのは、ご存知の方もありましょうが、私たちの派のまあ長老です、ビジテリアン月報の主筆で、今度の大祭では祭司長になった人であります。そこで、私たちは、俄かに元気がついて、まるで一息にその峠をかけ下りました。トルコ人たちは脚が長・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 製畳機を作る店の月報を出すことを、宿やの主人とその家の主とできめ、月給二人の細君連で相談して四十五円、五十五円として十円はやどに入れる。 そのやどやを急に出され、月報の店や何かうろつき夜一時すぎ、不明の七条の一軒の家を四組でかりて・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫